セックスしたい処女

今でもあるかどうかわからないが、その昔に「セリクラ」と言うものがあった。
店の中に女の子がたむろしていて、気に入った子がいれば金額を提示して店員に渡す。そして、最も高額入札した男がその子を外に連れ出せる権利を得られる仕組みだ。
僕とミノリンの出会いもまたセリクラだった。予め本番行為はNG(表向きはどこだってそうだが)の店だったので、女の子と食事でもしたいなと気楽な気持ちでよく利用をしていた。そこにミノリンがいて僕が競り落としたのがきっかけだ。
ミノリンはよく食べる子だった。男性でも持て余すくらいの大盛りライスなんかもペロリと平らげていた。デート援と言うか食事援のような関係だったと言っていい。
ミノリンはセリクラで指名されたらとにかく食いだめをして日々を過ごしていると言っていた。「こんなに食べさせてもらって悪いから」とお礼に軽い性行為(おっぱいタッチとかその程度だが)をさせてくれる時もあった。
男性恐怖症が重度なので克服したい30歳の処女です
確かによく食べていたミノリンだが、それは食いだめであり、バランスの良い食生活を送っているとは言い難かったようで、どちらかというとちょっと痩せ気味だった。ただ、痩せの大食いと言うキャラクターが何だか面白くて、僕はしょっちゅうミノリンを指名しては一緒にご飯を食べていた。
なお、ミノリンは本人曰く処女だった。セックスしたい処女だと言う。
「今は食べることが一番必要で楽しくて、セックスはその次くらいかなあ」
性欲は食欲が満たされるようになってから、というのがミノリンの価値基準だったようだ。そしてこうも言っていた。
「でももうすぐじゃないかな。ちゃんとした仕事も決まりそうだし、定収が入ったら毎日食べ放題になるからね」
だが、ミノリンとはそれっきりだった。交通事故で亡くなったのである。
僕と別れた直後、悲鳴と急ブレーキの音が響いて、駆け付けた時にはもうミノリンは原形をとどめていなかった。
こうして、ミノリンはセックスしたい処女のままで生涯を終えた。
最後にミノリンが最も必要としていた食欲を満たしてあげることができたのが僕にとっての救いだったのかもしれない。食欲と性欲を満たした後には、僕とミノリンの間にはどんな人生が待っていたのだろう、と今でも思う。
ネットカフェ難民
泊め男

Comments off